すっごく原作のTVドラマが好きなので、話が長くなってしまった・・・
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
(日本 2017年)
1993年に放送され、95年に劇場公開もされた岩井俊二監督の名作テレビドラマを、「モテキ」「バクマン。」の大根仁による脚本、「魔法少女まどか☆マギカ」の新房昭之の総監督でアニメ映画化。とある海辺の町の夏休み。中学生たちは花火大会を前に「花火は横から見たら丸いのか?平たいのか?」という話題で盛り上がっていた。そんな中、クラスのアイドル的存在のなずなが、母親の再婚のため転校することになった。なずなに思いを寄せる典道は、転校をしたくないなずなから「かけおち」に誘われ、時間が巻き戻る不思議な体験をする。声の出演は、なずな役を広瀬すず、典道役を本作が声優初挑戦となる菅田将暉、典道の恋敵となる祐介役を宮野真守がそれぞれ務める。
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? : 作品情報 - 映画.com
なんか賛否両論で否の方の酷評が多いようで・・・。
原作ドラマ大好きなので、少し寂しい、と思ったものの、だからって世間の意見だけに流されて、見に行かないというのはもったいない、と思って見に行きました。
結果、私は結構好きですよ。
雰囲気と有名俳優の声優起用なども手伝って勝手に「君の名は。」と同じのを期待して比較してがっかりする風潮があるようですが、そもそも別物の映画を「なんとなく似た雰囲気を感じる長編アニメ映画だから」と単純比較するのは乱暴です。
そりゃあ、「ん?」と思うところがないわけではないですが、それでいえば「君の名は。」も「ん?」と思うところは多々あったので。
あ。今回、がっつりネタバレ+岩井俊二版の回顧録を含むので、避けたい方はここまでで。(笑)
原作ドラマをおさらい
まずは、既に22年が経過している原作ドラマ(映画)をおさらい。
元々は1993年にフジテレビの連続オムニバスドラマ「If もしも」の1編として作成されたTVドラマが好評を受けて劇場公開された作品でした。
元々、人生の岐路に選んだ選択肢のそれぞれを選んだらどうなっていたか、を見せるというコンセプトありきで作られたドラマです。
その為、主人公の典道がプールで (A) 負けるか、(B) 勝つかで、その後の典道となずなの夏祭りの1日が大きく変わりますが、(B) 勝つ方のストーリーを描かれている中では (A)負けた方で生じた物語を知りません。
もっと具体的に言うと、典道はなずなが家出(かけおち)をしようとしたのは知っていますが、その理由が意に沿わぬ両親の離婚とそれに伴う引っ越しに対する小さな抵抗だとは知りません。
なずなもその小さな抵抗が無駄な抵抗というのは分かっています。
だから、やってきた電車に典道は乗ろうとしても、なずなは茶化して乗らず、踵を返して典道とふたりっきりの夏祭りの夜を楽しみます。
夜のプールでのなずなのセリフ「次会うのは2学期だね、楽しみだね」がそれを物語っていて象徴的です。
原作ドラマの場合、(A)で必死の形相の母親に抵抗むなしく連れて行かれるなずなの悲しい姿を見て、あの時に俺が勝っていれば・・・と思ったところで分岐に戻りますが、結局 (A) でも(B)でも、なずながそこまでして家出したかった理由は典道には明示されていません。この辺りの脚本はさすがですね。
片や今回のアニメ映画版・・・
原作ドラマでは、Ifの分岐に見せるというコンセプトのオムニバス・ドラマシリーズで、そのうちの1作ですよ、という前提が既に用意されていました。
で、今回のアニメ映画は単体の作品なので、どうやって分岐に戻るのか、といった仕掛けを用意する必要があります。
その辺りをどうやって描くのかなぁ〜?と大のタイムリープ物語好きは期待していました。 *1
結果、この映画でのその方法は 「なずなが海で拾った不思議な玉を投げつける」というものでした。
その方法自体は公式ホームページにも掲載されていますし、違和感を感じるものではなかったです。
ちょっと、おや?と思ったのはこの玉を使った時に使う前の出来事、記憶が覚えているか否かというよくある設定。
例えば、バック・トゥ・ザ・フューチャー は当然記憶があり、故に過去をいじって自分の存在が消えかけたりしますし、STEINS;GATE はオカリンだけが記憶を引き継いでいるが故に苦悩する物語です。
このアニメ映画の場合、1回目の分岐に戻るところでは(A)プールで負けた場合に起こった物語を(B)プールで勝った典道は覚えていません。
でも2回目分岐以降は確実にその前にあったことを覚えています。
故にあの時にこうしていれば、、、という反省を踏まえて行動を変えて危機を避けます。
その辺の統一感のなさは少し気になったところです。
でも、2回目以降は知っている方が正解かと思います。
だから、その後の二人の行動がなずなの悲しい小さな抵抗に留まらず彩られていき、打ち上げ花火の美しさにつながっています。
クライマックス、花火師が不思議な玉を打ち上げて割れた破片で見せる「ありえたかもしれない世界」「メルヘンな想像の世界」はそれはそれでありだと思うのですよ。
綺麗でした。
ラストシーンの意味
物議を醸し出している(らしい)ラストシーン。
夏休み明けの学校、先生が出席を取る中、主人公の典道が呼ばれても返事がない・・・
で、謎多きシーンゆえに、いろいろな解釈がネット上に挙げられています。
- なづなを追いかけて、二人で駆け落ちした
- なづなが転校しない世界であり、二人で授業を抜け出した
- なづなの引越しを見送りに行った
- 改変しすぎて、平行世界に飛ばされた
- もともと典道のいない世界になった(じゃあ何故出席を取る???)
- 死んだ (°_°)
人によって色んな解釈があって当然で、あーだこーだ言うの、みんな好きね、楽しそう。
そういうのもあって、あえて色々な捉え方をできるような終わり方にしているのかもしれません。
故に今回のエンディング自体は私は好きです。
ただ、そういった曖昧な、必然性を感じない=物議を醸し出すのを狙いすぎてるエンディングが不満を呼び、明示されない=物語として不十分で、故に駄作だ!という人もいるようです・・・
・・・・・・そんなにこれはこう!と全てに回答を明示しないといけないんですかね?
(・・?)
そういった寛容性のない見方は嫌いです。
私のエンディングの感想
私は特に今回のエンディング自体に何ら個人的な解釈を持ってません。
今回の記事を書くにあたってネット検索した皆さんの解釈も、色々考える人がいるなーと感心したぐらい。
ただ、個人的な解釈はありませんが、このエンディングは結構嬉しかったです。
何故なら、これはドラマ版では放送されなかった幻のエンディングのオマージュだと思ったから。
幻のエンディング
岩井俊二監督のドラマ版はTVオムニバスドラマの1作だったのに劇場公開されるほど好評で、岩井俊二さんは元々はTVドラマだった本作で日本映画監督協会新人賞を受賞するほどの異例作となりました。
その時のムーブメント、制作の裏話をまとめたドキュメンタリー「少年たちは花火を横から見たかった」というのが6年後に制作されるほどでした。
このドキュメンタリーの最後に幻のエンディング 「シーン85 新学期の教室」が収録されています。


そのシーンは今回のアニメ版と同じように、新学期の教室で先生が出席を確認するシーンからスタートし、カメラは徐々に教室を後にしながら、「島田典道くーん」と先生が呼びかける声が聞こえるところで終わります。
先にも書いたのですが、TVドラマ版の場合、なずなは典道を連れまわしますが、結局典道にはその理由が説明されません。
つまり、新学期が始まり、なずなが教室にいないことで転校したことを典道は知ります。
だからこそ、夜のプールのシーンでなずなが典道にいう「次会うのは新学期だね、楽しみだね」というセリフが儚く際立ちます。
このシーン85が加われば、それが更に引き立ったのかもしれませんが、TVドラマの時はそれがカットされ、ストーリーテーラーのタモリさんがそういった新学期の教室云々の趣旨の話をして終えるという描き方でした。
オムニバスドラマ集として統一感を出す為か、「If もしも」には少し明るめのドラマのエンディングテーマがあり、それを流すにはこのシーン85が合わない、または尺が長くなるということでカットされたのかも知れませんね。
(真相は知りません)
そんな感じで、この「少年たちは花火を横から見たかった 」で放送の6年後に幻のエンディングを知った私にとって、そのオマージュかのようなアニメ映画のエンディングは大変印象深く、感慨深いものでした。
とりとめない些細な話
かような原作ドラマ大好き人間として、こうなってたらもっと嬉しかったなぁーと言うとりとめのない些細な話を加えておきましょう。
誰の得にもならないけど。( ̄∇ ̄)
- お母さんの再婚・ビッチ話っている? TVドラマは単なる離婚だったのに。
- 原作のリスペクトで言えば、松たか子さんではなく、奥菜恵さんにお母さんやってほしかったなぁ・・・
- 同様にリスペクトならば、そこで叫ぶのは「観月ありさー」じゃない。今の中学生がそこまで「観月ありさ」じゃないでしょ。 やはりここは「広瀬すずー」で。
- 同様に「セーラームーン」はカットされたのね。。。やはりここは「キュアホイップー」@キラキラ☆プリキュアアラモードで。( ̄∇ ̄)
- 夜の海のシーンで、REMEDIOSの「Forever Friends」 を引き続き使ってくれたのには感涙 (;_;) このMVもTVドラマファンには嬉しい撮影地ですね。
- あ、DAOKO × 米津玄師『打上花火』は、それはそれでいい曲でしたけどね。
関連作品のご紹介
この「少年たちは花火を横から見たかった」はそもそもTVドラマ版の脚本に書かれていたタイトルだそうです。
それ故に、「少年たちは花火を横から見たかった」というのはこのTVドラマを振り返るドキュメンタリーのタイトルでもあり、岩井俊二さんがTVドラマでは描けなかったシーンも加えて再構成した原作小説も同タイトルを用いています。
そして「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」はそのタイトルで小説も出ていますが、岩井俊二さんの原作とは別の、今回のアニメ映画のノベライズです。
読み比べて見るのも楽しいかも知れませんね。
原作ドラマ本編自体は各種動画配信サイドで配信中です。
例えば、Huluでも配信されているので、無料お試しを利用すればタダで見ることが出来ます。
映画として公開された作品として扱われていますので、フジテレビの動画配信サイトFODに限らず多数のサイトで見ることが出来ます。
むしろFODには、そのままの「If もしも」全話を配信してほしい・・・
タモリさんのストーリーテラーが「世にも奇妙な物語」とはちょっと違った柔らかい感じで好きだったので。
ただ、どの配信サイトでも、そのTVドラマのムーブメントを追った「少年たちは花火を横から見たかった」は配信されていません。
原作になったTVドラマ、そのドキュメンタリー「少年たちは花火を横から見たかった」をじっくりと見てみたい方は、そのサントラCD、複製台本も合わせたBlu-rayボックスが発売中です。
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この辺りがドンピシャ。特に「きみがぼくを見つけた日」は秀作。
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